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zoom RSS 「ニートは救われるか?」のコメントに答えて

<<   作成日時 : 2005/05/20 10:02   >>

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ニートは救われるか?」に「風の祈り」さんとInoueさんからコメントをいただきました。ありがとうございます。

どちらも私にとっては思考を刺激されるコメントです。いろいろ考えたので、お返事が長くなりますので記事にします。

このブログは、「実証派ブログ」を標榜しており、お読みいただいた方はよくおわかりいただけると思うのですが、統計を多用しています。

なぜ、統計による裏付けという方法をとるのか?

社会を構成している主体、個人、企業、NPO、役所、団体がたくさんあり、置かれている環境も違い、判断の基準も違う。これらは、主体ごとに違うと同時に、同じ主体でも時間が経てば変わってきます。

このような主体がどんな行動を取るのか、どんな影響を受けているのかは、実際に大規模な観察をしてみないと分からない場合が多いのです。

「風の祈りさん」は「本年度の新卒採用計画で、去年より増やすと答えた企業も『質を落としてまで人数を満たすつもりはない』と注釈しているようです。やはり景気うんぬんでは雇用は増えると思いません」とコメントされています。もし、これが大多数の企業がそういっているなら、そしてその通り実際に行動するなら、しかも、質を落とさないと採用を増やせない状況なら、採用は増えないかもしれません。

しかし、大多数の企業がそういっているのでしょうか?いくつかそう注釈している企業があるだけなら日本全体でそうなるとは言えないでしょう。

実際、そのように行動するのでしょうか?方針を転換する、アンケートに答えた担当者はそう思っていたが、実際に人手を使う部署の意見は違った、上司の判断は別であったなど、いったこととやることが違う要因はいくつもあります。

今、多くの企業が、質を落とさないと採用できないような状況にあるのでしょうか?

こういった問題は、いくつかの企業の担当者に聞くだけでは分かりません。たまたま企業内に余剰人員を抱えていて少しぐらい景気がよくなったからといって、採用を増やさない企業もあるでしょう。誰もが入りたい、学生、生徒に人気があって、質を落とさなくても、募集さえすれば十分な数の採用ができる企業もあるでしょう。そういう企業だと、強気の発言になるでしょう。そういう企業があることは否定しませんが、問題は日本全体ではどうか?です。

この問題に答えようとすれば、「「これからの若者は仕事を見つけられるか?」 続報」に書いたように、日本全体を捉える統計で把握するほかありません。そして、現在の日本では、景気回復とともに企業全体の新卒採用は増えています。

これが統計を作る一つの理由、統計を使う一つの理由です。
(ついでですが、「風の祈り」さん、「確か日経新聞に書かれていたと思いますが、」というのはできれば勘弁していただきたいです。どの新聞の何日付のものか分からないと元の記事を探すのに大変苦労します。)

もう一つの理由は、「人によって判断が違う」からです。これには二重の意味があります。

まず、人によって、あるいは会社によって判断は違うのだから「フリーター」経験をプラスに受け止める会社も、中立と考える会社も、マイナスと判断する会社もあり得ます。今の時点なら、多くの会社では、中立か、マイナスと考えるだろうというのは、ある程度仕事の経験を積んだ人間には、質問するまでもなく分かるかもしれませんが、具体的な分布は調べてみないと分かりません。

そして、これが大事なのですが、肝心のフリーターの皆さんは、必ずしも経験を積んだ人と同じ判断をするとは限りません。夢を見ていたり、目をそらしたりしている可能性はあります。さらに、これからフリーターになるかもしれない高校生となると、もっと未熟で、判断力がありません。

フリーターを指向する若者に大人(親や先生の場合が多いでしょう)が、単に「現実は厳しいぞ」、「フリーターなんて評価してもらえないんだぞ」といったところで、うるさいお説教と捉えられるおそれがあります。私がそういう話をしても、「うざったい」と思われるのが落ちのような気がします。杞憂でしょうか。具体的なデータを元に説明していく方が、多少は有効でしょう。

こう考えると、この質問は「愚問」だとは言えないと思います。厚生労働省の統計担当者は、フリーターの増加に危機を感じて、あるいは責任を感じて(なにせ、労働、雇用の担当官庁ですから)、「せめて、具体的なデータを提供しなければ」と思ったのではないでしょうか。フリーターというある意味で格好のいい言葉を作り出した会社や、一時期それをもてはやしたメディアに比べれば、相当まともな判断で、「愚問」とまで決めつけてはかわいそうです。

このように理論的には予想のつくことでも、具体的な数字で裏付け、その正しさ、程度を確認することは大事です。これも統計を作り、利用する理由です。

コメントのおかげで、無意識に考えていたことを言葉にすることができました。お二人のコメントに感謝します。

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内 容 ニックネーム/日時
はじめまして。以前のエントリーへのコメントで恐縮ですが、パートタイム労働者数の最近の趨勢についての分析、読ませていただきました。総需要が改善傾向にあり、企業の正規労働者に対する採用意欲が改善しているからとの見方(「反動」との呼び方が適切かは疑問)については、非正規雇用者が正社員を代替する関係にあるかどうかについて、日本労働研究雑誌(「特集 パートの基幹労働力化と新たな課題」03/09発行)の原論文では「経済全体では正規労働と非正規労働の間には補完関係がある」ことを指摘しており、諸説あるものとは思います。(私の実感的には、これを最も支持します。)(続く)
rascal
2005/05/21 11:49
「飽和」と呼ばれている要素については、統計の計量分析により証明することは可能でしょうが(例えば、日本労働研究機構「非典型雇用労働者の多様な就業状態」第3章など)、産業構成ごとに需要の回復傾向が異なり、比較的に非正規雇用者比率の高い産業の採用意欲が低いためとの見方もできるため、統計だけで判断するのは困難です。「フルタイム労働者の非正規化」との見方については、一般職を非正規労働者に置き換えつつあるという企業の傾向から考えて実感が湧かず、また、後半の事業所センサス、毎月勤労統計の差異を利用した分析については、このような分析を行う際は調査の特性を踏まえて慎重に行う必要があると思います。(マスコミ的に表層的な言論を行う場合は別として。)
本エントリーのコメントについては、ハゲ同です。
rascal
2005/05/21 11:50
rascalさん、丁寧なコメントありがとうございます。
時期を見てお返事を差し上げたいと思います。多分、エントリーでお答えすることになると思います。
最後の部分なのですが、このエントリー自体に同意いただいているのでしょうか。それとも、このエントリーの元になったコメントへ同意されているのでしょうか。
平家
2005/05/21 14:01
「エントリー自体」ということです。失礼しました。
rascal
2005/05/21 17:13
それから、最初のコメントで「私の実感的には、これを最も支持します」といったのは、正規・非正規の補完関係についてではなく「総需要が改善傾向にあり、企業の正規労働者に対する採用意欲が改善しているからとの見方」についてです。重ねて、失礼いたしました。
rascal
2005/05/21 17:31

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