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zoom RSS パートタイム労働者の賃金 その5

<<   作成日時 : 2006/02/11 20:44   >>

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パートタイム労働者の賃金 その4」に、rascalさんからコメントをいただきましたので、お返事を。うまくrascalさんの問題意識とあうかどうか自信がないのですが。

基本に返って、パートタイム労働者の賃金の何が問題なのでしょうか?

基本は、パートタイム労働者の賃金が安いという問題意識でしょう。しかし、パートタイム労働者が登場した最初の時期、パートタイム労働者のほとんどが女性だったという事実があり、フルタイム労働者とパートタイム労働者の賃金格差は、形を変えた男女差別だという見方が有力でした。労働組合や行政でもパートタイム労働者の問題は女性問題という意識が強かったように見受けられます。

この見方に立つと、男女賃金差別、男女同一労働同一賃金の原則の違反のアナロジーとしてフルタイム・パートタイムの賃金問題を捉えることになります。

ちょっと、脇にそれます。必要があっての寄り道なので、ご容赦を。
問題になるのが日本での男女同一労働同一賃金の理解です。日本では同じタイプの男女労働者に共通の賃金体系(賃金表)を適用していれば、「男女同一労働同一賃金」が達成されていると、受け入れられてきました。企業だけではなく労働者も、労働組合も含めてです。

一方、職員と工員などでは労働者のタイプが異なるとして、職種別の賃金表は許容されてきましたし、雇用期間の定めのない本工と有期契約の臨時工の賃金体系に差があることは当然視されて来たのです。少なくとも正社員の側からは。二元的、多元的な賃金体系は、問題ないと考えられてきました。その次元を分けるのが「性」でなければ良かったのです。

また、年功賃金体系も許容されてきました。同じ労働をしていても年齢や勤続年数が違えば賃金は違っていて良かったのです。

こういった意味で同一労働同一賃金は理解されてきました。

本筋に戻ります。「フルタイム労働者とパートタイム労働者の賃金格差は、形を変えた男女差別だ」とするの立場に立つと、素朴に考えると、賃金は時間が短いから少なくなるというのは当然ですから、1時間あたり賃金は同じでなければならないということになります。しばしば、使われているのが所定内賃金を所定内労働時間で割った1時間あたり所定内賃金です。この点は、現在でも、常にパートタイム労働者の賃金の問題を議論するとき、真っ先に持ち出されます。

例として、厚生労働省の『働く女性の実状』↓をあげておきます。
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2003/03/h0328-3a-zu.html#zu2-19
ここでは男女の賃金格差と同じような扱いがされています。

このような素朴な観点からパートタイム労働者とフルタイム労働者の間の賃金格差を縮小するため様々な努力が払われてきたのですが、残念ながら格差は拡大傾向が続きました。また、不況に伴い若年男性がパートタイム労働につくようになってきました。なお、年功賃金の是正が進んできました。

日本で伝統的な「男女同一労働同一賃金」は、パートタイムの賃金体系が男女ともに適用され、パートタイム労働者とフルタイム労働者が別なタイプの労働者だとされる限り、この問題の解決には役立ちません。特に、男性パートタイム労働者の増加に伴って「形を変えた男女差別」という主張も弱まらざるを得ません。

このような状況の下で、いくつかの事実の指摘が行われるようになりました。パートタイム労働者とフルタイム労働者の間には差がなくなってきているという主張です。当初は、パートタイム労働者の勤続年数の伸びが主張されました。また、様々な職域にパートタイム労働者が進出しているという主張も出てきました。最近ではパートタイム労働者が「基幹化」しているという主張が中心になってきているように思えます。

これらの指摘は、パートタイム労働者はフルタイム労働者と同一タイプの労働者である、あるいは違っているにしてもその差は大きくないという指摘です。

これらは、「同じ仕事をしているのだから同じ賃金を(均等処遇)」、「違っているにせよその差は大きくないのだからバランスのとれた賃金を(均衡処遇)」あるいは「基幹労働者にふさわしい賃金を」といった主張を支えるための論拠として活用されているのです。男女の同一賃金同一労働が使えないのですから、こういう主張にならざるを得ません。

それなりに理由のある主張だと思いますが、実はこれらの主張をされる方は、パートタイム労働者の賃金、賃金体系をフルタイムのものに近づけようとされているのです。その点では、最初の問題意識、「パートタイム労働者の賃金が安いという問題意識」は一貫して維持されているのです。

しかし、当然ながら、パートタイム労働者のすべてがフルタイム労働者と同じ仕事を、同じ能率で、同じ責任を持って行っているわけではありません。

そこで、これまでの議論の延長上に出てきたのが、フルタイム労働者と同じ仕事を、同じ能率で、同じ責任を持って行っているパートタイム労働者には同じ賃金制度を、具体的にはフルタイム労働者の賃金制度を適用せよという主張です。賃金制度一元化論です。

これがうまくいくのかどうかが問題です。

長くなりすぎました。


(続く)

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内 容 ニックネーム/日時
平家さんのご説明でだいたい間違いはないのですが、もう少し厳密に言いますと、日本の実定法上「同一労働同一賃金」を定めた規定は(若干の留保を伴って)存在しません。労働基準法第4条をごらん頂ければわかるように、ここに定められているのは男女同一賃金であって、同一労働又は同一価値労働に対する同一賃金ではないからです。
この規定ぶりには理由があります。実は審議会に出された原案では「同一価値労働同一賃金」になっていたのです。ところが、労働側からそれでは生活給の思想と矛盾するというクレームが付き、女性であることを理由とする差別だけを禁止しようと言うことになりました。
hamachan
URL
2006/02/13 12:30
ところが、その後50年代、60年代にかけて、経営側や政府から職務給制度への移行が慫慂され、同一労働同一賃金原則が叫ばれる時代が続きます。間違えないでください。経営側や政府がそういっていたんです。そして、1967年にはILOの男女同一価値労働同一賃金を批准しちゃっているんです。その時に労働省の官房長は、年功制から同一賃金制へと変えていくんだと答弁しているんですね。
考えようによっては、これは解釈による立法改正を行ったのだと見られないこともありません。批准したILO条約の国内における効力をどう考えるかにもよりますが、少なくとも当時の政策当事者は日本的雇用システムを否定的に考え、それを欧米型に変えていくべきだと考えていたのでしょう。。
hamachan
URL
2006/02/13 12:31
ところが、これが1970年代に大きくひっくり返るのです。日本的雇用システムを維持し、より強化する方向に政策の舵が切られ、同一労働同一賃金なんて、そんな古くさいアホな話は誰からも相手にされなくなってしまいます。ちょうどこの頃国連から男女平等の動きが及んできましたが、みんな男性正社員と同様のキャリアパスに乗って年功賃金制を享受できるようにすべきだという発想で、同一労働同一賃金を基盤にして男女平等を論ずるという欧米で一般的な問題意識はほとんど見られませんでした。まあ、これが時代精神というものなのでしょう。

で、パートの問題となるわけです。

男女平等と同じ路線で行くのなら、パートにも年功制を、とか、短時間正社員を作ろうとか、そういう基幹化モデル路線ということになります。しかし、これで救われる人はそんなに多くない。
hamachan
URL
2006/02/13 12:34
では、再び同一労働同一賃金原則のお出ましか?これは賃金制度を根本的に作り替えるという話ですから、口で言うほど簡単なものではありません。本気でやるのなら、相当数の中高年正社員の賃金を引き下げなくちゃいけないでしょう。リップサービスはあっても、現実にはまず不可能。
hamachan
URL
2006/02/13 12:40
hamachanさん、コメントありがとうございます。そう、同一労働同一賃金原則に基づく賃金制度に切り替えるとなれば大変革です。また機会があれば書きます。
平家
2006/02/14 18:17

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