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zoom RSS オベリスクとエッフェル塔

<<   作成日時 : 2006/07/28 20:04   >>

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パリにあるオベリスクとエッフェル塔どちらも高いものですが、構造は全く違います。オベリスクは岩から切り出した一枚岩。組み立てたものではありません。エッフェル塔は鋼材を複雑に組み立てたもの。どちらが高いかと問われれば、もちろんエッフェル塔の方が高い。

より高い目標を達成するには、色々なものを複雑にくみ上げねばならないわけです。長細い石を切り出すには限界がありますし、それを立てるとなるともっと難しい。不安定になってしまい、それほど高いものを作ることはできません。

「健康で文化的な最低限度の生活」という目標も、実は、非常に高い目標です。地球の上でどれだけの人が「健康的で文化的な最低限度の生活」を送っているかを考えてみれば分か留はずです。「最低限度」という言葉に引きずられて低い目標と思ってはいけません。

さて、安心して飲める水が「健康で文化的な最低限度の生活」のために必要なのは確かです。これは水道の問題です。水道を運営している地方自治体は、健康的で文化的な最低限度の生活を意識して運営しているわけではないでしょうが、事実として、これに役立っていることは確かです。災害時の自衛隊の出動もそうです。自衛隊は「健康的で文化的な最低限度の生活」を保障するために作られた組織ではありませんが、役立つことは事実です。義務教育もそうでしょう。

それらは、多くの場合、「健康で文化的な最低限度の生活」を直接の目標、あるいは唯一の目標としてはいません。ちょうど、エッフェル塔を構成する鋼材の元となった鋼がエッフェル塔だけのtめに作られたわけではないように。

そもそも、単一の政策・制度だけで「健康で文化的な最低限度の生活」を達成することはできないのです。「健康で文化的な最低限度の生活」は、実はさまざまな政策を組み合わせることによって、初めて達成できる高い目標なのです。一枚岩でエッフェル塔のように高いものを作ることはできないのように。

同時に、「健康で文化的な最低限度の生活」の達成だけを考えていればいいというものではありません。そのほかにも達成すべき目標は色々あるのです。

ところが、hamachanさんの情報(http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/07/post_71f5.html)によると、私にとっては自明と思われるこの事実を否定しようとする人々が、なぜかいるらしいのです。

最低賃金が生活保護の水準よりも低いのはおかしいというのは、一見するともっともです。しかし、これはたった一つの政策制度によって「健康で文化的な最低限度の生活」が達成できるという、あまりにも楽観的な考え方です。また、すべての政策・制度は「健康で文化的な最低限度の生活」だけのために運営すればいいという考え方のように思えます。

そのような考え方をすると、「生活保護」と「最低賃金」の水準に差があるのはおかしいということになってしまうのでしょう。

しかし、言うまでもなく、最低賃金には最低賃金の、生活保護には生活保護の役割があります。財産もなく、年金の受給資格がないか、あっても金額が少なく、しかも働くこともできない高齢者には、生活保護を与えればいいでしょう(年金の額は差し引くにしても)。

また、働けて、働く場を見つけることができた人には、最低賃金を保証し、それによって得た収入が生活保護の水準に足りていればそれでいいし、満たなければ、そして貯金もなければ生活保護を与えればいいのです。なお、働くことのインセンティヴを与えるための工夫は可能ですし、実際に行われてもいるようです。

別に、生活保護、年金、最低賃金の額が同じである必要などどこにもありません。支給対象者も違うし、条件も差があるのですから。

最低賃金を、まりにも高い水準に引き上げれば、労働者の雇用が失われ、それを生活保護で救済すれば、コストがどんどん高くなります。とうてい今の段階で堪えられるものではありません。

いくつかの制度を組み合わせつつ、「健康で文化的な最低限度の生活」を達成すればいいのではないでしょうか。エッフェル塔の高さのオベリスクを作ることは不可能です。

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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
日本の生活保護法は、「財産もなく、年金の受給資格がないか、あっても金額が少なく、しかも働くこともできない高齢者」だけを対象にした法律ではありません。第2条をご覧下さい。これがこの法律の趣旨です。それがおかしいという考え方は十分あり得ます。それなら法改正をすべきでしょう。それをせずに、この「無差別平等」規定を堂々と残したままで、実質的に対象者を絞り込むような(敢えていえば脱法的な)法の運用を厚生省がやってきていたことがおかしいと(少なくとも法制論としては)言わざるを得ません。
hamachan
2006/07/28 21:30
日本の六法全書に載っている条文は、生活保護法がエッフェル塔とは別次元のオベリスクだとは書いていないのですよ。
わたしの申し上げているのはそれに尽きます。立法論としては、今まで厚生省がやってきていたような、働ける成人男子は相手にしないというやり方も十分あり得ます。しかし、それは現行法の規定を前提にする限り違法なのです。2004年の運用改正以後の、入りやすく出やすい生活保護というやり方が現行法の趣旨であるとしか言いようがない。
そして、現実に厚生省の運用がそういう風に代わってきた以上、法のそもそもの趣旨とその現在の運用を前提にして最低賃金や雇用保険との比較の議論になるのは当然のことなのです。

ちなみに、以上で話は尽きていますが、ヨーロッパにおける議論も、まさに最低賃金も失業保険も生活保護もすべてエッフェル塔であってオベリスクではないという前提で議論がされています。恐らくそれが世界的に標準の議論なのではないかと思われます。
hamachan
2006/07/28 21:30
hamachanさん、コメントありがとうございます。
お返事を記事にしましたので、お読み下さい。
平家
2006/07/29 12:20

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