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zoom RSS 長期雇用と職務給

<<   作成日時 : 2007/04/05 23:27   >>

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東京電力常務の山崎雅男さんという方が、労働市場の流動化と職務給に関連する面白い発言をされています。(座談会「消費者であること財・サービスの提供者であることの二面性を考える」での発言。日本労働研究雑誌 2007年4月号)

「例えば日本人はレジの係りでもちょっと時間があれば他の棚の仕事をしたりする。自分はその仕事をやりさえすればこれだけの給料をもらえるという、いわゆる職務給的なものの考え方というのは、日本にはあまり根づかなかった。つまり、職務以外の周辺領域の仕事もこなしながら、会社の中での仕事、職場の生活を送っていくというのが極めて一般的だった。すると職務給というのは何か。資格給とか職能給見たいなものは一般化するんだけれども、職務給というものは、私どもの会社ですら、結局、長くはできなかった。
 電力会社では、7,8割はオペレーションとルーティンの仕事です。したがって職務というものは明快に規定できるはずだというふうに思うのですが。ところが、長い間そうしてきたにもかかわらず、やはりうまくいかなかった。これは長期雇用との関係もあるかもしれませんが、日本人の仕事の仕方というか、これだけやればいいんだよといって割り切れない性格にあるのではないかと思います。」

「長期雇用、あるいは企業別組合といったものが、日本人の働き方をかなり規定してきたのではないかと。」

長期雇用慣行、企業別組合と資格給は、組み合わせとして妥当性を持つ。長期雇用慣行、企業別組合と職務給の組み合わせは、どうもうまくいかないと言うことです。なぜなら長期雇用慣行、企業別組合の下では、労働者がやるべき仕事は、やる仕事はフレキシブルに変わってくる。あるいは労働者自らが変えていってしまうからです。山崎さんは、語られていませんが、配置転換、転勤も比較的容易です。

長期雇用慣行、企業別組合のシステムでは、外部労働市場は流動性が低いけれども、企業内労働市場は流動性に富んでいるという表現をしても良いかもしれません。

このシステムには欠陥があります。自分の仕事はここまでという限界が明確ではないので、労働時間が長くなりがちで、ワークライフバランスが、ワークに傾く傾向があるのです。特に、労働者数が削減されていくと、長時間労働が発生します。

では、職務給と整合的な組み合わせは何かといえば、おそらく、雇用保障が弱いことを前提とした流動的な外部労働市場と産業別、あるいは職種別の労働組合か、労働組合がないという組み合わせでしょう。

なお、当然ではありますが、ここの労働者について職種、あるいは職務を明確に定めていけば、職場の仕事のフレキシビリティは失われます。この座談会でも、荷物検査をする人は大忙し、その隣でボディーチェックをする人は暇そうにしている空港の例が紹介されています。このシステムでは、個々人の仕事の限界が明確ですから、長時間労働は蔓延しにくい。一人の仕事が過大に設定されていなければ、という前提でですが。

一長一短ありです。とは済まされません。ここまでの話であれば、二つのシステムがあって、そのどちらかを自由に選べば良いように思えます。しかし、それほど自由に決められるわけではない。こういう事情があります。

「一朝一夕に電気の技術者は育てられません。(中略)一般の工業高校から人をとる。それでは、その人たちを職場にいれて平気かと。これはやはり無理なんですね。だから、連続じゃないにしても、初期1年間ぐらいはそういう技術・技能の育成のための時間が掛かるんじゃないでしょうか。電柱に登って、電線を補修したり、ヒューズを取り替えるなんていうのは、やはりある程度訓練させないとできないんですよね、高圧の電流が流れていますから。そういう育成というのは、会社が時間をかけてもやらざるを得ないだろうと思いますし、(以下略)」

「異動はそんなに頻繁に行うわけにはいかないので、結局かなり長い間同じ部門で働く人も多いわけです。それに人材育成にはやはりかなりの時間がかかる。例えば、当直長という原子力発電所の運転の責任者を育てるには20年ぐらいかかります。だから、中途採用してすぐそのポストにというわけにはいかない。そうした面からも人材育成のいろいろな制度・仕組みを工夫している企業は多いのではないでしょうか。」

電気の技術者にせよ、当直長(こういう名前があることを始めて知りました。)にせよ、その仕事ができるようにするためには、かなりの養成期間が必要です。養成しなければならない。

電気技術者の場合に、訓練→実務→訓練→実務→訓練→実務→ というサイクルを繰り返していき、最初の訓練と実務、最初の訓練と次の訓練の間に整合性があるように計画していくなら、この期間を通じて雇用が継続しているのが効率的です。幾つかの会社を渡り歩きながら、このプロセスを終了することも不可能ではないでしょう。しかし、その場合、最初の訓練と実務、最初の訓練と次の訓練の間に隙間があったり、重複があったりする虞が大いにあります。長期雇用の方が効率的なのです。

当直長の場合はもっと極端でしょう。当直長は絶対に必要ですが、他者が養成した人間を採用する以外には中途採用はできない。すると、採用したいときに募集してみても採用できるかどうか分からない。であれば、自分で20年掛けて養成するしかないということになります。養成の途中で辞められてはたまりませんから、そのときどんな仕事についていようが、転職を考えないだけの待遇はしなければなりません。

このとき短期的には仕事と賃金のつながりは断ち切られます。当直長候補が、たまたまある時期にXという仕事をしているとします。同じXという仕事をしている労働者がいて、こちらについては仕事と賃金が常に対応していると仮定します。このとき両者の間には、外見上の作業は同じですから同一作業同一労働と考えれば、「同一労働同一賃金 」は成立していません。やむをえないでしょう。

当直長になってからは、そもそも当直長の外部労働市場というものはないのですから、企業内部のバランスを考えながら労使で処遇を決めるほかはない。

結局、長い間の養成を必要とする職種には、長期雇用慣行と資格給という組み合わせしかないということになります。

もっとも、これは電力会社のように需要が安定しており、地域独占がみとめられている会社だからそうできるという側面があるのかもしれません。会社全体、産業全体の需要が激変したときは長期的な養成そのものができなくなるのかもしれません。また、養成されてきた人は能力を発揮する場を得られないことになります。長期雇用には長期雇用なりのリスクがあります。

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高効率の生産を最大目標とおくなら、積み上げ的な訓練が必要な長期雇用システムは必須でしょう。しかし、地球環境と同様、一定の不効率さを抱えながらでも、労働の流動性を高めなければ、社会の効用を減じてしまう時代になったのです。安定企業はそこを真剣に考えるべきです。結局自分に帰ってくるからです。
tama
2008/07/02 16:09

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