労働、社会問題

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zoom RSS 市場の失敗 その2 量子力学

<<   作成日時 : 2008/02/29 21:19   >>

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市場の失敗 その1」その1で述べたように現実の労働市場は、はなはだ不完全な物でしかありません。

これに加えて労働サービスの提供者である労働者は意志を持っており、労働サービスは買い手である企業の自由にはなりません。多かれ少なかれ労働者の意志が労働サービスの質と量に影響を与えます。これは普通の財とは全く違います。

財を売った後、その売り手の意志が財に影響を与えることはありません。例えば、スープ皿を1枚買えば、買った人間はこのスープ皿を完全に自由に取り扱うことができます。テーブルに並べようとしたら、スープ皿の機嫌が悪くてうまく並ばないということはあり得ません。そのかわり買った人が何もしないのに、自分から食器洗い機に入ることもありません。また、スープ皿に支払った金額や支払い方法によって、スープ皿の大きさが変わることもありません。使っていく内に自然に高級品になっていくこともありません(骨董品としての価値が上がることはありますが、物理的に良い物に変わることはありません。)。スープ皿同士が喧嘩を始めることもありません。助け合うことも。

これに対して、労働者が契約に従って上司の指揮命令に服するのは当然なのですが、面従腹背ということは起こりえます。仕事をするとき労働者はある程度の自由度を持っています。企業は、労働者に適切な指揮命令を行うだけでなく、労働者がそれに従って能力を発揮しているかどうかをモニターしなければなりません。(指揮命令するのも労働者であり、モニターするのも労働者であるというケースが多く、これがまたやっかいな問題を引き起こしますが。)この指揮命令、モニターには費用がかかります。これは労働市場における取引費用の一部です。このような取引費用は、型にはまった単純な作業、仕事ではない場合、学校の授業、新製品開発など労働者の自主的な努力が求められる場合、非常に膨大な物になる可能性があります。一方、うまくいけば労働者が自ら積極的に仕事に取り組み、成果を上げるということは起こりえます。また、賃金体系によって仕事への取り組みが変わることは大いにあり得ます。そのために役に立つと称するコンサルタントが大勢います。また、経験を積む中で労働者の能力が向上することもあり得ます。ただし、その能力は労働者のものです。「わが社で働いて身に付けた能力じゃないか、ここでその能力を発揮してくれ」といっても、労働者がやめていくのは自由です。労働者の離職理由、悩みの中で職場の人間関係はかなりのウェイトを占めています。チームワークの良さで成果を上げることもあります。

不完全な労働市場の下で、企業はこのような特質に対応する必要に迫られます。このため、一方で、企業は、外部労働市場での労働サービスの調達、利用と、内部労働市場での労働サービスの調達、利用を組み合わせていきます。他方、労働者の側も、企業との距離を保ちつつ外部労働市場で労働サービスを売るか、企業との関係を強め内部労働市場で労働サービスを売るかを選んでいきます。比較的労働者の裁量の余地の小さな単純な作業で、仕事の成果が明らかになるものほど外部労働市場で取引されることが多くなるでしょう。一方、内部労働市場ではある程度の期間雇用関係が継続することになるでしょう。

そして、外部労働市場では、限界生産性=賃金が成立する傾向を持ち、外部労働市場で調達された労働サービスが雇用という形態を取る場合には、労働者の裁量の範囲が狭く、指揮命令系統も賃金体系も単純なものに留まる傾向があります。一方、内部労働市場では、期限の定めのない契約が主流となり、調達される労働サービスについては労働者の裁量の幅が大きくなりがちであり、指揮命令系統(企業の内部組織)も賃金体系も複雑化していきます。賃金は限界生産性に近づくとは限りません。特定の労働者の限界生産自体計算が困難でしょう。労働者一般との関係ではなく、特定の労働者との関係が問題になってきますので、内部労働市場では、企業と労働者の間で一種のゲームが始まります。規制(の緩和)は、ゲームのルールの変更です。ただし、ルールが変わってもゲームでなくなるわけではありません。内部労働市場での政府の規制の効果、もっとも望ましい規制のあり方というのは、そう簡単に決まるものではないでしょう。

経済学は物理学を一つのモデルとしています。均衡や安定など様々な概念を物理学から取り入れています。古典的なミクロ経済学では、企業や家計は内部に構造を持たない最小単位として扱われています。しかし、最近のミクロ経済学では家計の意志決定に家計の構成員がどう加わるかとか、企業の内部の取引をゲームのようにとらえて分析しています。

企業内部の取引は、企業と外部の取引とは別の原理が働きます。物理になぞらえるなら、原子を構成する陽子、中性子、電子、あるいはクォークの動きの分析ですからニュートン力学ではなく量子力学の世界です。ニュートン力学に比べて量子力学は理解が困難です。しかし、現実の世界を分析し、利用し、生活を向上させていくためには、量子力学を学ぶほかありません。いくらニュートン力学が単純で美しくとも世界をニュートン力学だけで説明できるものに変えることはできないのですから。

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