労働、社会問題

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zoom RSS 混乱の本当の原因

<<   作成日時 : 2009/05/24 12:10   >>

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WEDGE大竹論文の問題点」で hamachanさんがこう書かれています。長いのですが引用します。

労働経済学者は往々にして、意識的にか無意識的にか、この両者(平家注 解雇権濫用法理と整理解雇4要件)をごっちゃにした議論をしたがるんですね。大竹先生だけの話ではありません。
思うに、この法理混同の原因は、この世で発生する解雇という現象を、経済学者にとって経済理論で容易に理解可能な、つまり通常の合理的意思決定に基づく合理的行動である整理解雇の概念枠組みでもって理解しようという成功(平家注 性向)に由来するものではないかと思われます。
ところが、現実に行われる解雇のかなりの部分は、そういう合理性で説明可能というよりは、人間ってこういうばかげた理由で人を首にできるんだなあ、とあきれるような話が多いんですね。現実世界は経済学者が想定するより遙かに不合理に満ちています。
ある人が、経済学者は生理学者であり、法学者が病理学者であるといいましたが、整理解雇は生理現象であり、ちゃんと働いているのに「お前は生意気だから首だ!」ってのは病理現象であって、後者は、人間は合理的に行動する者であるという経済学者の想定からすると、なかなかすっと入らないのではないかと思われます。
病理学者である法学者にとっては、異常性の表れである一般解雇の規制がまず第一義的なもので、合理性の表れである整理解雇はその応用問題に過ぎないのですが、生理学者である経済学者にとっては全く逆なのでしょう。
ごちゃごちゃ書きましたが、要するに、経済学者が解雇権濫用法理と整理解雇法理をごっちゃにするのは必ずしも悪意からというよりは、そのディシプリンからくるところという面があるのではないかということです。
(中略)
一般的な解雇に対する規制は、およそまともな労働契約関係秩序を維持しようと思えば、絶対的に不可欠なものであって、使用者による恣意的な解雇という病理現象をやり放題にして良いなどと言うばかげた話は許されるものではありません。


深い理解に基づいて書かれたご意見で特に異論はないのですが、実は別の理由もあるのではないかと思います。経済学者には、「権利の乱用」ということが良く分からないのではないでしょうか。

経済学者にとっては「ある場合には自分の持っている権利を行使してはならない」ということが理解しにくいのでしょう。権利の行使に対する制約=権利そのものの剥奪あるいは制限、規制と読み替えられている可能性が高いと感じています。経済学者にとっては、労働基準法による差別の禁止(解雇は労働条件ですから)、解雇の制限と解雇権乱用法理による解雇の無効の差が良く分からないということです。

私がこう思うのは、経済学者の書いたものをいくつか読んでみて、民法第1条第3項に触れたものが皆無だったからです。

これはある意味では当然です。労働法学者が解雇権乱用についてきたものを見ても、あまり民法第1条第3項まで遡って説明していないようです。労働法学者の皆さん、間違っていたらすいません。それは別に法学者が手を抜いているわけではなく、民法の一般条項は労働法学者にとっては自明であり、労働法学者が専門書や論文を書くときに想定する読者も当然知っているはずだからでしょう。例外は「大内先生のこの本」ですが、これは新書で、一般人向けだからここまで書かれたのでしょう。経済学者は学者ですから、労働法を勉強するとき専門書や論文を読むのでしょう。そういうやり方で労働法を勉強すれば、権利の乱用を十分に理解できないことになります。経済学者の皆さん、間違っていたらごめんなさい。
経済学者には、自由(権)の制限を嫌う性向もあります。この立場からは、「『使用者による恣意的な解雇』は確かに「病理現象」であり、望ましくはないが、それは市場メカニズムの中で解決すべき(されていく)もので、政府(国)が自由(権)を制限することによって解決すべきではない。なぜなら自由は市場メカニズムの根本であり、そんなことをすれば副作用が出てくるはずだ。政府は市場メカニズムの機能を損なうべきではない。」ということになるでしょう。多分。

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労働、社会問題
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コメント(17件)

内 容 ニックネーム/日時
先方でも別エントリーでコメントしたのですが、民法を読み直すと

無期雇用は、いつでも解約できる
有期雇用が期間満了後も継続している場合は、いつでも解約できる
5年を超える雇用契約が実際に5年を経過している場合は、いつでも解約できる
一般的に権利の濫用を禁止する

という構造になっています。ここで注意しなければならないと思うのは、
民法では「無期雇用の解約」は解雇ではなく「雇止め」であって、解雇は
「有期雇用の期間途中の解約」のこと(契約を反故にすること)を言うと
いう解釈が自然です。(当然、今は判例や民法以外の法律は無視します)

とすれば、無期雇用の解雇(というより民法的には「雇止め」ですが)に
対し権利濫用法理を適用するのならば、有期雇用の雇止めにこそ権利濫用
法理を適用すべきということになるはずです

このような議論があまり聞かれない(間違ってたらごめんなさい)ように
見えるのは、労働法学者の怠慢ではないでしょうか
「混乱の本当の原因」について
2009/05/25 12:14
大竹先生も、その後、労務屋さんと同じことを書いていましたね

>厚生労働省の高原正之氏から、つぎの文章にした方が正確だとご指摘を受けました。
>(中略)
>期間の定めのない契約のほとんどが、民法制定時の想定とは異なり、事実上、定年年齢に達するまでの有期契約と労使によって理解されるようなものになっていたという事情がある。

そこで、やっぱり疑問が。定年制は【民法で言う】期間の定めのない契約であるという解釈は妥当なんですか
マルチです。
2009/05/25 12:55
「有期雇用の雇止め」より「無期雇用の解約」を強く制限するような論理は含まれてはいません
収穫
2009/05/25 17:28
>労働法で定められている不当な解雇には当たらなくても、民法の権利の濫用に当たる解雇は存在する。そのため解雇についての争いの裁判では、何が解雇権の濫用かという形で争われることが多く、司法の場で、解雇一般についての「解雇権濫用の法理」が形作られてきた。この背景には、期間の定めのない契約のほとんどが、民法制定時の想定とは異なり、事実上、定年年齢に達するまでの有期契約と労使によって理解されるようなものになっていたという事情がある。

WEDGE論説の解雇規制に関する説明
http://ohtake.cocolog-nifty.com/ohtake/2009/01/wedge-228c.html
wedge 論文、その後
2009/05/27 23:08
>労働者側のほうをバインドしていませんから、「有期雇用契約」には当たらないです。そうかといって「期限のない雇用契約」でもないわけです。私は、これは法的に空白ではないかと思います。

>期限がない雇用契約に比べて、採用行動における慎重さが低下するケースがあります。とにかく、よくわからないけれども採ってみようということが、有期契約であれば簡単になる。そうすると、5年後に解雇されるかもしれないし、再契約されないかもしれないけれども、それがなかったときに比べると、最初に就職するチャンスは高くなる形になります。現在だと、期限のない雇用契約か、あるいは非常に期限の短いパートタイムでしか採用チャンスがなくて、多くの人がフリーターになっているということに比べると、より望ましいことのほうが多いのではないかと思います。

http://www.mhlw.go.jp/shingi/0110/txt/s1023-1.txt
労働政策審議会労働条件分科会
2009/05/27 23:49
池田信夫が民法の原則に還れと言ったから、それに応じて【民法の文章だけ】を普通に読んで解釈したら、どうなるのか?、ということを試しにやってみてると言っているのに、どうしてそこで、「労働法の教科書を読め」になるのかなあ。民法の教科書ならまだしも。訳分かりませーん
??????
2009/05/28 03:38
WEDGE論説の解雇規制に関する説明
http://ohtake.cocolog-nifty.com/ohtake/2009/01/wedge-228c.html

>日本の民法は、もともと契約自由と権利の濫用は許さないという原則で書かれていたため、民法の文面では、権利の濫用でない限り、期間の定めのない契約の使用者側からの解約(解雇)の申し込みは自由となっていて、この申し込みをした場合には2週間後に契約は終了することとなっていた。一方、労働法では、いくつかの解雇の制限が行われてきた。
民法と労働法
2009/05/28 13:27
(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
第六百二十七条  当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。
(雇用の更新の推定等)
第六百二十九条  雇用の期間が満了した後労働者が引き続きその労働に従事する場合において、使用者がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の雇用と同一の条件で更に雇用をしたものと推定する。
この場合において、各当事者は、第六百二十七条の規定により解約の申入れをすることができる。
(期間の定めのある雇用の解除)
第六百二十六条  雇用の期間が五年を超え、又は雇用が当事者の一方若しくは第三者の終身の間継続すべきときは、当事者の一方は、五年を経過した後、いつでも契約の解除をすることができる。
(やむを得ない事由による雇用の解除)
第六百二十八条  当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。
民法(現在)
2009/05/28 13:37
例えば、今の法律では「解雇」とされる状況(の一つ)が、法律が変わると「解雇」とはされなくなる、ということはあるわけです。
こういった場合、「解雇」という言葉の【法律的な意味が変わった】と言えるでしょう。少なくとも日常用語のレベルではね。
ひょっとすると、法学の世界ではそうは言わないのかもしれませんが。

さらに、このことを解雇規制緩和(の一つ)と言ったとしても、日常用語のレベルでは違和感がないでしょう。
ただ、この言い方は混乱を招き易い面があるな、とも思います。特に法律世界の住人の方が混乱し易いみたい。
素人の言葉は、法律用語じゃないんだよ
2009/06/16 22:45
法律が変わってある言葉の法律的な意味が変わった場合、それは日常的な意味にも影響を与えるでしょう。法律家は法律の変化に合わせて言葉の解釈を迅速に変化させるのだと思いますが、日常用語への影響は、「そんなに迅速でない」と思います。

もし、その後、法律的な用語の意味がそんなに変わらずにいれば、長い時間を掛けて、日常用語の意味を変化させていくでしょう。しかし、一般的には「日常用語レベルの意味」の変化を予測するのは容易ではありません。結果、「法律を変えるときであっても、現在の意味で言葉を解釈することが自然だ」ということになります。上記のようなことも、解雇規制緩和と表現することは、素人にとっては自然なんですよ。

法律を変えるとき、それに合わせて用語の意味を変えて解釈するのが慣わしの法律家と、あくまで現在の用語法で語る素人では、特に法律を変える議論でコミュニケーション上の齟齬が起き易いのです。
齟齬
2009/06/16 23:23
会社を辞めてもあまり痛くない制度になっていれば、企業はちょっと待遇を悪くするとか、早期退職をちょっと優遇するとかで、労働者を自己都合退職に誘導することが容易になる訳です。そういうのも含めて「解雇規制緩和」と言うのはそれ程、変な言い方ではないでしょうが。変ではないが、ミスリーディングだから表現に注意した方がいいとは思いますけど。例えば、雇用終了規制緩和とか言えばいいのでは
雇用終了規制緩和
2009/06/17 01:43
「労働者にとって解雇されてもあんまり痛くない社会である」という表現ではなくて、【雇用終了になっても痛くない】という表現に拘る理由は、例えば法律的に解雇だと痛くなくて、法律的に自己都合だと痛い社会では、労働者が辞めようとする場合には、法律的に解雇になるように使用者に仕向けるという妙なことになってしまうからです。

ところで、池田氏を腐すことを目的とするエントリーのコメントはその目的に沿ったものしか許されないのでしょうかね?素人のブログ相手に何をムキになってるのやら。
濱口 vs 池田
2009/06/17 03:48
解雇という言葉ひとつを取ってみても世間では色々な意味で実際に使われているんだから、「スウェーデンの現在の法律では解雇の意味はこうなっいるから、池田は間違ってる」という感じで文句を言っても用語の「多義性」云々と返されてしまう訳でしょう。それより

世間ではそういう風に使われることもあるのだろうが、そういう使い方はこういう理由で良くない

と率直に言った方がいいと思う
世間
2009/06/17 05:48
誰だよ、「アメリカは解雇自由」なんて言ったのは…。というか、これを解雇自由と言うなら

解雇自由であったとしても、池田信夫の場合も定年前なんだから正当な事由なくして解雇できないんじゃね?

「民法の原則に戻れ」って、こういうことでしょが。素人池田信夫以外にも、嘘つきがいた訳だ。専門家のね

小倉さんのことじゃないです

> 契約による例外
>
> ハンドブックやマニュアルに「従業員は正当な事由なくして解雇されることはない」、
> 「従業員の解雇の際にはしかるべき手続きがとられなければならない」などと記載されている場合、それは
> 任意の雇用を否定しており、そうした記載に則った経営側の行為が求められることになるのかどうなのかが
> 裁判の論点となってきた。80年代おいて、こうした記載がある場合、それは片務的契約を形成しており、
> 任意の雇用ではないとみなすべきであるとする判例が主流を占めるようになった。

米国における解雇
http://myoshida64.hp.infoseek.co.jp/Doc-dir/000129.pdf
米国における解雇
2009/06/18 23:46
吐息の日々〜労働日誌〜
> 年齢以外のなんらかの理由での解雇を行わざるを得なくなる、年齢以外の理由による以上、それは年齢という点では当然に『いつでもクビ切り』ということになる
http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20090615

これが適切な認識か、どうかは「解雇」「クビ切り」という言葉の意味の解釈によるのでしょうね。
例えば、「法的解雇」という狭い解釈だと間違いだろうし、「雇用終了」という広い意味なら正しいでしょう。

【注意】上記は「定年退職」を解雇(の一つ)とするような用語法ですね。
解雇という言葉が多義的だから…
2009/06/21 09:25
デンマークはアメリカと同様に特約による解雇規制であり、「法律的には解雇自由」です。
濫用法理による解雇規制がないとしても、「特約による解雇規制」が働く可能性を一般には否定できない。
任意規定
2009/09/03 23:12
解雇規制を、「特約」(←例えば、定年制など…)によるものとしてではなく、「濫用法理」でやってしまったことにボタンの掛け違いがあるのですね。

> 司法の場で、解雇一般についての「解雇権濫用の法理」が形作られてきた。この背景には、期間の定めのない契約のほとんどが、民法制定時の想定とは異なり、事実上、定年年齢に達するまでの有期契約と労使によって理解されるようなものになっていたという事情がある
http://ohtake.cocolog-nifty.com/ohtake/2009/01/wedge-228c.html
ボタンの掛け違い
2009/09/05 11:11

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