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<<   作成日時 : 2011/04/09 09:51   >>

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女性の結婚、出産と仕事」に続いて、厚生労働省の第8回成年者縦断調査(http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/judan/seinen11/index.html
の紹介です。

最後のテーマが、所得です。これが今回の調査の中で最も面白いと,私が感じた部分です。

面白い比較ができるように所得が集計されています。第8回調査時で27歳、32歳、37歳の人について、第3回調査から第8回調査までの6年間の平均所得と、第8回調査のみの所得を集計されています。1回の所得だけではなく過去6年間の所得の平均も作られているのがポイントです。このようなデータは同じ人を長く追い続ける調査でなければとれません。縦断調査ならではのデータです。

過去何年かの平均所得と1年だけの所得を並べて比較できるようにしてある意義は直感的には分かりにくいかもしれません。少し解説をしておきます。
 仮設的に三つの社会を考えます。格差固定社会、中間社会、平等社会と呼ぶことにしましょう。この3つの社会では、どれをとっても1年目にはAという人の所得額が100万円、Bという人の所得額200万円、Cという人の所得が300万円だとします。一番所得の多い人と少ない人では、3倍の所得格差があります。
さて、格差固定社会というのは、2年目もAが100万円、Bが200万円、Cが300万円で,1年目とは変化のない社会です。2年目をとっても、やはり格差は3倍です。
この社会で2年間の平均所得を求めてみましょう。平均所得も、Aが100万円、Bが200万円、Cが300万円です。平均所得の格差も3倍ということになり、毎年の所得格差と平均の所得格差は全く同じです。

格差固定社会の所得(万円)
1年目100200300
2年目100200300
平均100200300


中間社会を考えます。この社会では2年目は、Aが増えて200万円、Bも増えて300万円、Cだけは減って100万円といったケースです。2年目も所得の一番高い人と低い人の格差が3倍であることに変わりはありませんが、所得の一番高い人と低い人は1年目とは別の人です。
ここでの平均所得を考えると、Aは150万円、Bは250万円、Cは200万円です。一番高いBと一番低いAの格差は1.67倍です。毎年の所得格差は変わらないのに、平均してみると格差がずいぶん小さくなっています。

中間社会の所得(万円)
1年目100200300
2年目200300100
平均150250200


最後の平等社会を考えます。Aが300万円、Bが200万円、Cが100万円と1年目とはちょうど逆になっている社会です。平均所得はA、B,C全員が200万円です。平均所得の格差は1倍、つまり格差がないということになります。

平等社会の所得(万円)
1年目100200300
2年目300200100
平均200200200


三つの社会のどの1年をとっても所得格差は3倍ですが、2年間の平均所得、その格差には大きな差が出てきます。
平等社会であれば1年の格差がいくら大きくても気にする必要はないでしょうし、格差固定社会なら、その格差が小さくても、格差が妥当なものかどうかよく検討する必要があるでしょう。

現実の社会でもこの例のように、各人の所得が固定的か流動的か等の違いにより、毎年の格差が同じでも、平均所得で格差に差が生じることがあります。

この調査が明らかにしたのは,日本の比較的若い層で,男女別に所得格差が固定的なのか,流動的なのかです。2種類の所得について、男女別に金額階級の分布、平均額、四分位数、四分位分散係数が計算されていますので,これを利用してみていきます。実に面白い結果が出ています。愉しい結果という意味ではありません。深刻な結果と言えなくもありません。最大の特徴は男女で全く違うということです。男女を比較しながら見ていきます。

1 年齢と平均所得の分布
男性では・・・第3回から第8回までの平均所得をみると、27歳は200万円以上300万円未満が多く、32歳と37歳は300万円以上400万円未満が多くなっていて、年齢が高いほど金額階級が上がる傾向があります。

中位数をみると、年齢が高いほど高くなる傾向があります。中位数というのはすべての人に所得の高い順に並んでもらい、ちょうど真ん中にいる人の所得です。

女性では・・・第3回から第8回までの平均所得をみると、27歳は、100万円以上200万円未満が最も多く、次いで、200万円以上300万円未満であるが、32歳では、100万円以上200万円未満が最も多いが、ほとんど同じ割合で100万円未満も多くなっている。37歳では、最も多いのが100円未満である。女性の所得は、年齢が高くなると金額階級が下がる傾向にあるのです。

中位数をみると、年齢が高いほど低くなっています。

平均所得の中位数(万円)
27歳32歳37歳
男性214.5300.0388.0
女性183.0158.0108.5
女性(男性=100)85.352.728.0


2 年齢と1年の所得の分布
男性では・・・第8回の所得をみると、27歳も300万円以上400万円未満が多くなっており、32歳と37歳は金額階級の高い方に移っているのがわかります。年齢が高くなると所得は高くなるのです。
中位数をみると、年齢が高いほど高くなる傾向があります。

女性では・・・第8回までの所得をみると、最も多いのは27歳で200万円以上300万円未満、32歳では所得なし、37歳では100万円未満です。若いとき高くていったん下がり,再び増えるのですが、若いときには戻りません。
中位数では年齢とともに下がっています。

1年の所得の中位数(万円)
27歳32歳37歳
男性295.0310.0400.0
女性205.0150.0103.0
女性(男性=100)69.548.425.9


3 3回から8回までの平均所得の四分位分散係数
四分位分散係数というのは、所得の高いほうから25%目の人の所得から低いほうから25%目の人の所得を引いて、その差をだし、それを中位数で割ったものです。格差の指標だと思ってください。所得の高い人と低い人の差が大きいほど、この数字は大きくなるので、この値が大きいと格差は大きいと考えてください。

男性では・・・0.25から0.29の範囲内にあり、年齢が高くなるにつれて拡大するという傾向はありません。
女性では・・・0.30から0.88と男性に比べて大きく、年齢が高くなるほど大きくなっています。
男女の比を見るとよくわかるのですが、27歳までの6年間では男女で所得の格差がそれほど違ってはいません。しかし、32歳までになると女性の格差は男性の格差の2倍以上、37歳までになると3.5倍です。男性の生き方が画一化されているのに比べると女性の生き方は多様だということです。

平均所得の四分位分散係数
27歳32歳37歳
男性0.280.260.25
女性0.300.540.88
女性(男性=100)107208352




4 8回調査の所得の四分位分散係数
男性では・・・0.25から0.29の範囲にあり、年齢が高くなると格差がやや広がる傾向にあります。
女性では・・・0.49から1.14の間にあり、男性に比べて格差は大きく、年齢が高くなるにつれて格差が明確に大きくなる傾向にあります。

1年の所得の四分位分散係数
27歳32歳37歳
男性0.250.260.29
女性0.490.861.14
女性(男性=100)196330393



5 3回から8回までの平均所得の四分位分散係数と第8回調査の所得の四分位分散係数の比較
男性では・・・両者の間に大きな差は見られず、比較的格差は小さいものの固定的な傾向にあると言えそうです。
女性では・・・8回のものより3回から8回の平均の方が小さく,格差は大きいもののより流動的な傾向が見て取れます。

男性の平均所得の四分位分散係数と1年の所得の四分位分散係数
27歳32歳37歳
平均0.280.260.25
1年0.250.260.29
0.03△0.04


女性の平均所得の四分位分散係数と1年の所得の四分位分散係数
27歳32歳37歳
平均0.300.540.88
1年0.490.861.14
△0.19△0.32△0.26


男性はずいぶん固定的であるようです。なぜこんなに固定的なのか決定的なことは分かりません。ただ、「学歴と仕事」で書いたように正規であったものはその後も正規であり易く、非正規であったものは正規に転換しにくいことが格差を固定化させる一因であろうと思われます。ただ、四分位分散係数で見る限りという条件付きではありますが、1年の所得で見ても、6年間の平均所得で見ても格差自体は大きくないようです。

女性、この調査で扱っているのは未だ、40歳になる前の女性です、は、所得の流動性が高いようです。これは「女性の結婚、出産と仕事」で書いたように、正規で働いていた若い女性が,結婚や出産を機に働くのを辞めたり、非正規になったりすることと関係がありそうです。このような変化があると,1年分の所得については、一方では「所得なし」の人もいれば正規で所得の高い方もいることになり、格差は大きなものになります。同時に,何年かを取ると最初正規であった方が,後の方では所得なしになったりして,高い所得を維持し続ける方が多くないという結果になり、所得格差は固定化せず、平均所得に大きな格差が生じにくいという結果になります。
40前の女性については1年の所得のデータで格差が大きい、小さいを議論するより平均所得のデータで議論したほうがいいような気がします。

将来の予測をすると、毎年の所得については、一方で、結婚、出産をして正規を続ける人、結婚や出産をしないで正規を続ける人がいます。この人たちの所得は徐々に上がっていくでしょう。他方、仕事をしない人の数は子どもが大きくなるにつれて減っていくでしょう。多くは、パートタイムなどでそれ程多くない所得を得ることになるのではないかと思われます。やや長期で見ると格差は拡大していく可能性の方が高いでしょう。男性より格差が大きいという状況には変化はないと思われます。

平均所得についてはどうでしょうか?結婚出産という大きなイベントのある時期を過ぎると、仕事が固定化し、所得も大きな変化をしなくなると思われます。したがって、長期的には1年ごとの所得の分布との乖離は小さくなる、つまり格差は拡大していくだろうと思います。

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