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<<   作成日時 : 2015/05/14 11:36   >>

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保守親父@労務屋さんが「『感情労働』フォロー」「「『感情労働フォロー』フォロー」という二本のエントリーを書かれています。多くの論点を含む面白い論考です。子育て支援などを考えてられる方には、是非一読されることをお勧めします。

ご主張には概ね賛成できるのですが、根拠づけが違うところもあるし、多少意見が違うところもあるので、少し論じてみたいと思います。

まず、「前々から書いているように私は出産・育児には外部経済があると考えていますので公的な支援は正当化可能であり、かつ現状をみれば一定の支援の拡大が必要だろうと考えています。」というご意見にはその通りだと思います。

より一般化していえば、外部経済がある場合、政府の介入のない市場で、企業や個人が自らの以外に基づいて、意思決定をした場合、その結果は必ずしも社会全体の立場から望ましいものにはならないので、政府の適切な介入は正当化できるということでしょう。この場合、介入の仕方は公的支援には限られません。制裁や規制でも構わないのです。情報提供という方法もあり得ます。これらをうまく組み合わせて適切な介入を行うことが必要です。不適切な介入を行えば、事態は悪化します。

出産について言えば、個人の利益に基づいて子供の数を決めると、おそらく社会にとって望ましい子供の数より少なすぎることになるでしょう。であれば、子供の数を増やすような介入が必要なのですが、出産しないことに対する制裁は論外で、規制も無理でしょう。基本的には、出産しやすい環境を整えるための助成ということになります。

であれば、育児負担の軽減をという話になり、出産に関連する費用の給付というのは、ごく自然な政策ですし、妊婦、胎児の健康維持のための検診費用の負担も妥当な政策です。
(これについて、地方分権によって妙なことが起こっていました。不適切な制度設計の問題でしょう。こちら参照。http://takamasa.at.webry.info/200802/article_3.html

出産と育児は不可分なので育児費用が高いと個人は出産数を押さえます。また、保守親父@労務屋さんがおっしゃる通り、育児そのものにも外部性があります。したがって、こちらに介入することも正当化されます。こちらについては、制裁や規制も十分にあり得ます。助成ももちろんOKです。育児を自分でする個人に対する給付、保育サービスを利用する個人に対する助成もありますし、保育サービスを提供する施設に対する補助もあります。このような介入は、どれをとっても間接的に出産にプラスの影響を与えるでしょう。しかし、直接には育児を自分でするか、保育サービスを利用するか、利用するとすればどのような質のサービスを利用するの選択に影響を与えるということです。子供の成長にとって育児の質が重要であることを考えると、質の良い育児が行われるような介入が必要です。

さて、根本に立ち戻って考えてみると、介入のない市場では、保育サービスについて
利用者の私的な費用>利用者の受ける便益
なら、親は保育サービスを利用しないでしょうし、逆に
利用者の私的な費用<利用者の受ける便益なら、保育サービスを利用するでしょう。

利用者、供給差全体を見て、均衡の条件を考えると

利用者の私的な費用=利用者の受ける便益
になるところまで、サービスが利用されることになります。

ここで、利用者の私的な費用は料金で、これは保育サービス提供者のコスト+利益を反映しています。コストの中心は労働者の賃金でしょう。利用者の受ける便益は、自分で保育をせずにサービスを利用して働いたときの賃金と考えていいでしょう。他にも余暇の増加や体力、気力の負担の軽減のもあります

すると、上の均衡の条件は
保育サービス提供者のコスト+利益=利用者の賃金など
となります。

すると、利用者の賃金が上がればより多額の私的費用を払っても、利用したほうがいいということになりますから、保育サービス労働者の賃金が上がってもいいということになります。「やはり支払能力を上げて「自分で育児」になる料金を上げることが保育士の労働条件を上げる上でも重要という話になる」という
保守親父@労務屋さんのご見解は、この限りでは正しいのです。

しかし、育児に外部経済、勝手ながら都合により社会的便益と読み替えさせていただきます、があることを考えなければなりません。この場合には社会的にみて望ましいのは、

保育サービス提供者のコスト+利益=利用者の私的負担+利用者の受ける便益+育児サービスの社会的便益−母親の育児の社会的便益

となるまで、育児サービスが利用されることです。ここで大事なのは育児サービスの社会的便益から母親の育児の社会的便益を差し引くことです。こうしておかないと母(父)親が育児をしたほうが望ましいときにも育児サービスが利用されることになってしまいます。育児サービスに対する助成を増やせば増やすほどいいのだということにはなりません。

利用者はあくまで自分の負担と自分の便益を比較して利用するかどうかを決めますから、放っておけば利用量は社会的に望ましい水準を下回ってしまいます。そこで、育児サービスの社会的便益が母親の育児の社会的便益を上回る水準に見合う公的負担を入れて、私的負担を軽減し、

利用者の私的負担+社会的負担(=利用者の受ける便益+育児サービスの社会的便益−母親の育児の社会的便益)=利用者の受ける便益+利用者の受ける便益+育児サービスの社会的便益−母親の育児の社会的便益

となるようにすれば、いいのです。こうすると、
利用者の私的負担=利用者の受ける便益
となるサービスの利用量で、
利用者の私的負担−社会的負担(=社会的便益)=利用者の受ける便益+利用者の受ける便益+育児サービスの社会的便益−母親の育児の社会的便益

となるからです。つまり、単に利用者の支払い能力を上げることだけでは社会的な最適は達成されないのです。

次に、育児サービスの質の問題です。質の悪い育児サービスは母親の育児サービスに劣る危険性をはらんでいます。これに対して過大な助成を行うと、サービスを受けている期間中、子供は不幸せでしょうし、子どもがちゃんと育ちません。育成にマイナスになります。これは同時に低賃金労働の供給を増やすことにもなります。(2015年5月15日追記)質の悪い保育サービスに対して助成を行い、親をそのようなサービス利用に誘導すると現在の(低賃金)労働力不足を解消するため、将来の良質な労働力を犠牲にすることになります。まるで、薬物中毒です。(追記終わり。)

そこで、保守親父@労務屋さんの「したがってやはり良質なサービスを提供する事業者に必要な費用を助成するという従来から行われている手法が妥当なのだろうとは思います。」というご意見は極めてまっとうだと思います。

しかし、このようにするためにはコストがかかる訳で、コストの制約から十分な量のサービスが提供されない恐れがあります。すると、保守親父@労務屋さんのご指摘の通り「支払能力の比較的高くない人ほど就労へのニーズが高く、したがって保育のニーズも高くなる」ということを考えると、そのような方が価格の安い、そして質の悪いサービスを利用するという問題が発生します。現に発生していると思います。この場合には、二つの対策があると思います。一つは、これらの方々に保育サービス利用の優先権を与えることです。もう一つは、就労ニーズを引き下げるために、現金給付を行うことです。現金給付は、これらの方々がより高い、そして質の良い育児サービスを買うことに使うこともできます。保守親父@労務屋さんは「その方法としては現時点では一応民主党政権時代の「子ども手当」のような子ども(事実上保護者ということになるでしょうが、このあたりの議論はひとまず措く)に対する金銭給付でダイレクトに支払能力を引き上げるのがいいのではないかと考えています。」と書かれているので現金給付を使って育児サービスを利用することを想定されているようですが、自分で育児をしてもいいのです。これは、「自分で育児」を「無償労働」から、「有償労働」に切り替える事でもあります。

なお、現金給付を幅広いものにしたとき、育児サービスへの需要が減るなら、優良なサービスへの助成も減らせます。新たな施設を建設して、当面は利用者がいても、子どもの数が減る中で近い将来施設が余ってしい、無駄になるということであれば、思い切った現金給付により需要を削減するということも考えられます。保守親父@労務屋さんの言われる「全額を子どもと保護者への給付にあてるよりは、事業者への給付もバランスよく組み合わせるのが効果的なのでしょう」と逆の向きからみたことになりますが、いい組み合わせを考えることは大事です。

このような現金給付についても、国民に負担を納得してもらう必要があります。そのためには、現在の年金制度の中に育児年金として組み込むのがいいと思っています。

長くなりましたので、今回はこのへんで。

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