財政再建・最後の試算

名目か実質か」の続きです。これが最後です。

思いもかけず、長いシリーズになってしまいました。ご参考のためにまとめをしておきます。
「破局」を迎えるか否かで整理します。ここで「破局」は国債発行残高を名目GDPで割ったものがどんどん大きくなることを指しています。

財政全体で赤字が出続ければ破局であるとか、プライマリーバランスの均衡が達成できなければ破局であるというような考え方もあるでしょうが、国債発行残高を名目GDPで割ったものが、一定水準を保てば、財政は持続可能であり、破局とは言えないでしょう。このような考え方の方が、経済学の世界ではむしろ主流だと思います。先に示したように財政全体で収支が均衡していても、プライマリーバランスの均衡が達成できても、財政が持続できなくなる場合、まさに破局、があるからです。

逆に言うと、「プライマリーバランスを均衡させる」とか、「プライマリーバランスの赤字を減らす」という目標はわかりやすくていいのですが、これを達成しても、実は破局を迎える可能性があるのです。こういうものを目標にすることの致命的な欠陥です。

前置きが長くなってしまいました。

1 たとえ、利払費も利払費以外の普通の支出を全部税収でまかなえ(財政健全度{松」)、国債を新たに発行する必要がなく、国債残高が増えなくとも、名目GDPが減り続ければ、破局に至る。

2 たとえ、利払費以外の普通の支出を全部税収でまかなえ(財政健全度「竹」、プライマリーバランスの均衡達成)、利払い費用に充てる分だけしか新たに国債を発行しないとしても、GDPの名目成長率が名目金利より低ければ、破局に至る。

(財務省のゲーム↓では、プライマリーバランスの均衡を達成しさえすればうまくいくようになっていますが、それは間違いです。)
 http://www.mof.go.jp/zaisei/game.html

3 たとえ、GDPの名目成長率が名目金利より高くとも、税収では賄いきれない支出を、ある一定限度以上、増やし続ければ(プライマリーバランスをある限度以上に悪化させ続ければ)、破局に至る。

国債発行残高を名目GDPで割ったものが増えなくなるたびに、政治家が「だいぶ安定してきたじゃないか。もう少しぐらいなら増やしてもいいだろう。」と言い出すのは、ありそうなことです。そうなってしまえば、永遠に上昇し続ける、つまり破局に至ることになります。

GDPの名目成長率を名目金利より高くしさえすれば、破局は避けられるとは限りません。ある程度の財政の節度が、必要です。この節度が具体的にどれ位の額なのかは「梅の計算式」から分かります。

4 GDPの名目成長率を名目金利より高く保ち、税収では賄いきれない支出を、ある一定限度以上、増やし続けなければ(プライマリーバランスをある限度以上に悪化させ続けなければ)、破局に至らない。

(国債残高の伸び率を国内総生産(GDP)の名目伸び率と等しくできれば、国債残高をGDPで割った比率を一定に保つことができます。これは「梅の計算式」、名目GDP×名目成長率=利払費+税収でまかなえない普通の支出で分かります。最初からそうである必要はありません。ある時点でそうなればいいのです。)

以下は、破局に至るかどうかの判定基準ではありませんが、一応。

5 GDPの名目成長率が名目金利より高ければ、高いほど改善が始まるのは早い。(重要なのは両者の差であり名目成長率や名目金利自体の水準ではありません。)

6 名目金利を低くできれば、低くできるほど、改善を図るために必要な物価上昇率は低くて済む。

7 GDPの名目成長率が同じなら、実質成長率が高いほど、国民の財政需要に応えやすい。

8 もし、物価の上昇率が上がれば名目金利も上がるという関係が成立していれば、名目成長率と名目金利の差を大きくするには、実質成長率を高めるのが唯一の道である。

最後に、しつこいようですが、もう一つの例を示しておきます。比較的実現性があるのではないかと思っています。税収では賄いきれない支出を、16兆円から毎年1.4%ずつ増やします。(プライマリーバランスはこの分だけ悪化し続けます。)実質成長率は2%、物価の上昇率も2%、名目成長率は4%です。16兆円の目減りはごくわずかで、税収は実質で見て2%ずつ増えますから、財政支出の実質額は減りません。最初の国債発行残高は、550兆円、最初の名目GDPは、500兆円、名目金利は、1.4%です。


第五の試算(兆円、倍)
国債発行残高名目GDP倍率
0年5505001.10
5年目6746081.11
10年目8137401.10
15年目9699001.08
20年目1.1431,0961.04


財政再建・試算・現状」の第一の試算と比べてみて下さい。

これらの試算は、名目成長率や名目金利、プライマリーバランスが、このようであればこうなる、というだけのものです。本当の問題は、このような条件を生み出すような経済政策が、存在するかどうかです。

長い間おつき合い頂いて、ありがとうございました。

(10月5日追記)この記事の「第5の試算」を一部修正し、補ったものを作成しました。「「財政再建・最後の試算」の修正 前編」と「「財政再建・最後の試算」の修正 後編」です。この記事と合わせてお読み下さい。




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