「ちょっと変だよ、日経新聞 基礎的財政収支」について

去年の終わりに、「ちょっと変だよ、日経新聞 基礎的財政収支」で、日経新聞の基礎的財政収支の理解の不足について書いたのですが、今日(2006年3月19日)もおかしな記事が載っていました。「視点」の「ニュース入門」という欄の「名目成長率と長期金利」と題する記事です。島田貴司さんという署名があります。

この記事が奇妙なものになってしまっている原因を考えてみました。

「財政再建とは何か?」という問題に対して根本的に違う二つの考え方があることを理解していないのが、原因であるようです。

ひとつは、経済学者の主流の考え方です。財政再建とは財政が安定的に持続可能であるようにすることだと考えます。

もうひとつは、多分、政治家的な考え方で、財政再建とは国債残高を増やさないことだという考えです。

「名目成長率と長期金利」、「基礎的財政収支」は経済学者流の考え方をしたときに意味があります。端的にいえば「基礎的財政収支が均衡していて、名目成長率が長期金利と等しければ、財政は持続可能である。」ということになるからです。

政治家的な考え方をするのであれば、「名目成長率と長期金利」、「基礎的財政収支」は有効な分析道具ではありません。別な概念を使わなければならないのです。

日経新聞の今日の記事が奇妙なものになってしまっているのは、経済学的な財政再建の考えを中心にしていながら政治家的な考え方も混ぜてしまい、、その上、経済学者的な考えに基づいて分析するための「名目成長率と長期金利」、「基礎的財政収支」を十分理解せず議論しているからです。考え方が不徹底で、かつ基礎的な概念を理解できていないのです。

具体的にいうと次の部分です。

まず最初です。
「基礎的財政収支が赤字になると、国債発行を増やして不足分を補てんする必要があるので、国債の残高が増えてしまいます。」

正しくは「基礎的財政収支が黒字であっても国債の利子支払いをその黒字でまかなえなければ、国債発行を増やして不足分を補てんする必要があるので、国債の残高が増えてしまいます。」です。

基礎的収支が均衡していれば、国債を発行しなくてすむと誤解しているのでしょう。基礎的財政収支の赤字+国債の利払い(正確に言えば国債管理のための事務費も加えなければなりません。)を新たに発行する国債でまかなわなければならないということが理解できていないようです。

「国債発行を増やして・・・・国債の残高が増えてしまいます。」も意味不明です。国債発行を前の年に比べて増やさず、同額発行しても国債残高は増えます。「国債発行を増やして」ではなく「国債を発行して」なら分かりますが。

より根本的には、国債残高が増えるかどうかを問題にしてしまっていることです。その次に書かれている「財政再建のためには、この(名目GDPに対する債務残高の)比率を下げなければなりません。」とどういう関係を想定しているのでしょうか?

次がこれです。
「名目成長率が長期金利よりも高く推移する場合、経済成長による税収増が国債の利払い費の増加を上回ると考えられ」

これは、間違いです。
今、名目GDPが500兆円、税収がその1割の50兆円、国債発行残高が5,000兆円、長期利子率が2%とします。基礎的財政収支が均衡していて利払い費だけ国債を発行しなければならないとします。

名目GDP成長率が3%のとき、税収もその割合で増えるとすれば、税収の増加額は

50兆円×0.03=1兆5千億円です。

利払い額=国債の増加額は5,000兆円×2%=100兆円です。これに長期利子率をかけたものが利払い額の増加額です。利払い額の増加額は100兆円×2%=2兆円です。自習の増加額を上回ってしまいます。

基礎的財政収支が赤字であるときはもっとひどいことになります。

ここは、正しくはこう書くべきでした。

「基礎的財政収支が均衡し、しかも名目成長率が長期金利よりも高く推移する場合、名目GDPの成長率が国債残高の増加を上回り、名目GDPに対する国債残高の比率が低下する。」
「名目GDPの成長率と同じ率で税収が増え、長期利子率が一定であれば、税収に占める利払い費の割合も下がっていく。」と付け加えておけばなおいいでしょう。これが経済学者的な財政再建の考え方ですから。

三番目です。
「名目成長率が長期金利を下回る・・・場合国債の利払い額の増加が税収増を上回るため、早期の消費税などの増収策が必要となります。」


正しくはこう書くべきでした。

「たとえ基礎的財政収支が均衡していても、名目成長率が長期金利を下回る場合には、名目GDPの成長率が国債残高の増加を下回り、名目GDPに対する国債残高の比率が上昇し続ける。この比率を一定に保つためには国債残高×(利子率-名目成長率)という額だけ基礎的財政収支を黒字に保たなければならない。この場合も、国債残高は増え続けるので、必要な基礎的財政収支の黒字額は無限に増加する。

もし、名目GDPの成長率と同じ率で税収が増え、長期利子率が一定であれば、税収に占める利払い費の割合は上がり続ける。これを避けるためには、名目GDPに対する税収の割合を上げ続けなければならない。」

最後です。

「名目成長率と長期金利をどう設定するにしても、まずはプライマリーバランスの改善が必要です。」

正しくはこう書くべきでしょう。「プライマリーバランスを相当改善したとしても、名目成長率が長期金利を下回る限り、税率を無限に上げ続けなければ、名目GDPに対する国債残高の比率が上昇し続けます。そして税収に占める利払い費の割合は上がり続け、財政は持続すらできません。そして税率をを無限に上げ続けることは不可能です。なぜなら、税率を100%以上にあげることは、事実上不可能だからです。」

きついことを書きましたが、経済の専門誌である日経には、この問題に関する基礎的なことから説き起こしたある程度まとまった記事、本当の意味での「ニュース入門」を書いてほしいのです。この問題は重要なのですから。



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