社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その47

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その46」の続きで、テキストの「3.3.3 モデルの枠組み」と「3.3.4 将来財市場と基本債券」に入ります。

2期間のモデルで説明されています。

仮定1 財の種類に関するもの=条件付き将来財
1 個人がI人
2 財は消費財が物理的には1種類だけ
3 1期目の状態(state)は確定している。
4 2期目の状態は確定しておらず、J箇の状態が起こりえる。Jは有限。
5 2期目にj(1からJ)という状態が発生する確率はπ(j) Σπ(j)=1
このモデルでは、先に述べたとおり状態が異なれば消費財は異なると考えるので、市場で取引されているのは、現在財が1種類、将来財がJ種類です。

仮定2 状態の観察可能性に関するもの=対称的な情報
2期目にどの状態が生じたかはすべての個人(市場参加者)が観察できる。

特定の個人にしか確認できない情報を私的情報(テキストには英語が出てきませんが、private information です。同じものを隠された情報、hidden information とも表現します。)と呼び、契約当事者の一方だけが状態を観察できる事態を情報が非対称的(asymmetric information)であると呼びます。このモデルでは私的情報はなく、情報は取引をするものの間で全く対称的です。
子供が、「今日は、お腹が痛いから、学校を休みたい。」と言ったとき、親はこどもが本当のことをいているのか、嘘をついているのか分からないことがあります。これが情報が非対称的な典型的、日常的な例です。
この仮定は、仮定5が成立するための必要条件です。

仮定3 情報に関するもの
将来のそれぞれの状態がどのような確率で起こるかについての情報は、すべての個人に平等に与えられており、情報格差は存在しない。
この情報は正確であるとは限りません。間違えるときも、皆間違えます。市場参加者の間で平等だと言うことです。これは非現実的な仮定であると思われるかもしれませんが、この仮定を緩和した議論が、すぐ後で出てきます。市場参加者の間で情報に差があると、資産市場(で成立する価格)が情報を伝達する機能を持ちます。これは3.3.4節で取り上げられます。

仮定4 所得に関するもの
このモデルでは貨幣は存在しませんので、所得とは消費財をどれだけ得るかということです。個人の所得は第1期には確定している。第2期は、どの状態が生じるかによって変わる。第2期の所得は不確実であるのです。
個人i は、第1期にyi1単位の消費財を得ます。そして第二期にはそのとき実現する状態に応じて、yi2(j) 単位の消費財を得ます。

仮定5 市場に関するもの=完備市場
すべての期間、この場合は第1期、第2期の各状態で消費されるすべての財(1+J種類の)はすべて第1期に取引される。1+J箇の市場が第1期に開かれている。
このようにすべての状態について市場が開かれている状態を完備市場と定義します。
第1期に消費される財を取引する市場は、現物財市場で、代金の支払いと同時に財(の所有権)が引き渡されます。これに対して、第2期に消費される財の市場は複雑です。どの状態が実現しているかによって差が生じるからです。代金の支払いは現物財と同様に第1期に行われます。しかし、財(の所有権)が引き渡しは、第2期にどの状態が実現したかで変わりますので、引き渡しは第2期にしかできません。jという状態が実現したら引き渡すという約束であれば、jが実現したときには引き渡されますが、jではない状態になれば、引き渡しは行われません。不確実性があるために、支払いが行われたのに、財の引き渡しはないという事態が発生しうるわけです。
このような将来財の市場を、「第2期に状態jが起きた場合に限り1単位の消費財を配当として支払うことを約束した債券が第1期に取引されていると考えることができ」ます。こうした債券を条件付き基本債券(state contingent claim)、あるいは基本債券と呼ばれます。
余談ですが、ここで言っている債券というのは、請求権のことです。
このような取引が行われるためには、第2期にどのような状態になったか、両当事者で同意できることが前提です。つまり、仮定2の対称的な情報が成立していることが必要です。

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