低賃金ビジネスモデルからの脱却

パートタイム労働投入の時給弾力性」で示した表からわかるように、200年代初頭やリーマンショック後の時期には賃金をほとんど上げなくても、あるいは引き下げてもパートタイム労働を中心とする非正規労働力を容易に調達できるという環境が整っていました。労働力の量の面では企業は恵まれていたわけです。また、この豊富な労働力は高度成長期に見られたような学校を卒業して、初めて職に就く人ではなく、リストラなどが行われていたこともあって、ある程度職業経験のある人たちでした。一から職業訓練、教育指導をしなくてもいい労働量です。質の面でも恵まれていたのです。

一方、不景気ゆえに所得が低下し、高級品、中級品は売れにくくなり、低級品への需要が増えました。経済学の用語を使えば、所得が増える(減る)と需要が増える(減る)正常財の需要が減少し、所得が増える(減る)と需要が減る(増える)劣等財の需要が増加したわけです。

ここで、一つのビジネスモデルが成立しました。質、量ともに豊かな労働力を非正規労働者として雇用し、低級品を製造販売するモデルです。これを低賃金ビジネスモデルと呼ぶことができるでしょう。LCCなどその典型ではないかと思います。

このビジネスモデルは、当時の環境にうまく適応したものであり、チャンスをつかんで、このモデルに従って起業なり、新事業への進出を進めた方々は、かなりの割合で成功を収めたのではないかと思います。

今後、パートタイム労働の時給弾力性が小さくなり、賃金が上昇していくことになると、質、量の面での好条件もなくなりますし、徐々に低級品への需要も減っていく可能性がでてきます。もしそうなれば、低賃金ビジネスモデルからの脱却が必要になります。企業家精神を生かして、新しいビジネス環境への対応を進めてもらいたいものです。

いくつかの方法があると思います。大転換であれば非正規労働者を正社員化する、新卒を採用して、教育訓練を行うというのがありますし、小転換なら、これまで採用していなかった65歳以上の高齢者を雇う、2時間、3時間といった細切れでも雇うなどです。商品も変更する必要があるでしょう。いずれにせよ、低賃金ビジネスモデルからの転換が必要です。

私が、これはやってほしくないと思うのは、低賃金ビジネスモデルを維持するために低賃金分野に限定して外国人労働者を受け入れられるように、政治家を動かすということです。これに成功すると、日本は永遠に低賃金国家になってしまいます。本当の意味での企業家精神を発揮してもらいたいと切に願っています。

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