2012年から2019年までの経済のパフォーマンスの回顧と教訓 その1


はじめに
 2012年と2019年までの経済のパフォーマンスを検討し、今後の経済運営の参考となる教訓を洗い出したい。2012年からとするのは大幅な金融緩和が開始された、あるいはそれが予告された年であるからであり、2019年までとするのは2020年からは新型コロナにより新しい局面に入ったと考えるからである。
 2012年の段階で財・サービス市場や労働市場で,ある程度の需要の不足があったことは広く認められている。その程度はそれほど大きくはなく、そして、2018年、19年には労働市場では需要超過になったという理解がされているようである。この理解に立てば、この間の経済成長率は潜在成長率+若干のアルファとなっていたことになる。そして、それが低かったのは、専ら供給側の生産性が停滞していたからだとされる。この認識に基づけば、成長戦略の中心は規制改革など構造改革であるべきだということになる。
 2012年と2019年までの経済のパフォーマンス、特に労働市場の動向の検証を通じて、この認識が妥当なものであったかを確認したい。特に確認したいのは、経済成長をもたらしたものが何であったのか、そしてもっと高い経済成長率を達成することはできなかったのか、賃金の停滞を防ぐことはできなかったのかということである。

マクロ経済
GDP成長の要因
 潜在的GDP(均衡GDP)成長の要因は、資本サービス、労働サービスの投入の増加、全要素生産性の向上に分解できると考えられている。また、財・サービス市場で需要不足が存在するときには、需要の拡大により現実のGDPを潜在GDPに近づけることが可能であると認められている。しかし、市場の調整を通じて需給ギャップは解消され、通常大きな需要の不足が続くことはないと考えられている。
 2012年から2019年の7年間に実質GDPは7.4%増加した。年率に直すと1%強であり、比較的低めの成長であった。通説に従えば、2012年に存在していた需給ギャップは早めに解消されたので、成長率が低かったのは構造改革にもかかわらず、生産性が向上しなかったということになる。
 労働投入量(毎月勤労統計から試算)は6.0%増加した。GDP成長率との差は1.4%であり年率に直すと0.2%程度である。労働生産性が上昇することによって生産が拡大したのではなく、労働投入量を増やすことによって成長した。外延的成長であったといえる。一見すると、通説の予想する現象が起こったと考えられるかもしれない。
 問題は労働投入が持続的に増加していたことである。通説の想定どおりであれば就業者は当初は高めの増加率を示し、その後は安定的な増加となるはずである。なぜなら、当初の均衡を回復する期間は、潜在的な成長率よりも高い成長を示す。そして均衡経路に乗れば、潜在的な成長率で成長するはずである。当然、当初は就業者の増加率も高く、以後は緩やかな増加になるはずである。しかし実際には、就業者は持続的に増加を続け、最大の増加となったのは2018年(134万人増加)である。2019年の就業者(6,724万人)は、2012年の就業者(6,240万人)に完全失業者(285万人)を足したものを上回っている。つまり、2012年の完全失業者がすべて就業した場合よりも150万人以上増加している。また、労働力人口も持続的に増加した。また、毎月勤労統計から、調査産業計、規模5人以上の1時間当たり実質賃金を試算すると、2017年までパートタイム労働者では上昇したものの、一般労働者では下落し、就業形態計ではわずかであるが下落している。2018年から常用労働者の定義が変更されたので、確実なことは言えないが、2018年以降も目立った上昇は見られなかった。

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