2012年から2019年までの経済のパフォーマンスの回顧と教訓 その5

2012年から2019年までの経済のパフォーマンスの回顧と教訓 その4(https://takamasa.at.webry.info/202101/article_7.html)の続きです。

 労働市場の拡大
 労働力調査をもとに労働市場の状況を考える。人口が減る中で労働力人口は2019年に2012年よりも321万人、4.9%増加した。先に述べたように、労働力人口の大幅な増加は、労働市場の需給がタイトになり就職が容易になったために、求職意欲を喪失していた者が求職活動を始めた結果だと思われる。就業者は444万人、7.1%増加した。同時に役員を除く雇用者は毎年増加を続け、2019年には499万人、9.7%増加していた。この役員を除く雇用者や就業者の増加は2012年当時の完全失業者数(285万人)を上回っている。つまり、先に述べたように2012年には完全失業者数、完全失業率(4.3%)が示す以上に、労働市場の需給が緩んでいたと考えるべきだろう。なお、就業者のうち自営業や家族従業者が減っているため、この増加幅は就業者の増加よりも大きい。
 役員を除く雇用者の動きを正規、非正規に分けて検討する。この場合、2014年までと2015年以降を分けて、二つの局面に分けることができる。初期の2014年までは正規が減少し、非正規が増加した局面である。2014年には、2012年に比べて、正規は57万人減少して、3,288万人になった。これに対し、非正規は151万人増加して、1,967万人になった。毎月勤労統計の常用労働者数と総実労働時間から労働投入を試算すると、この期間はほぼ横ばいである。素朴に考えれば、正規を非正規が代替したということになるだろう。他方、実質輸出、実質企業設備投資や実質GDPは増加している。平均時間当たり労働生産性は高くなっていたことになる。
 これに対して後半の局面では正規、非正規とも増加した。2014年に比べると2019年は、正規は206万人増加して3,494万人になり、非正規は198万人増加して2,165万人に達した。絶対数では正規の増加の方が多いが、非正規の構成割合は高まり続けている。非正規のうち「正規の職員・従業員の仕事がない」ため非正規となっていたのは2013年には341万人であったが、2019年には236万人まで減少した。この理由以外で非正規となっているものは、360万人増加した。非正規割合の高まりは、必ずしも否定的に捉えるべきではない。
 この局面転換の理由だが、一つの可能性として、労働市場の需給のタイト化が上げられる。2014年までに完全失業者は2012年の285万人から49万人減少して236万人になった。これにつれて完全失業率は2012年の4.3%から3.6%に低下した。いつでも雇い入れが可能という認識が薄れ、企業などが正規の採用に積極的になったのかもしれない。
 財・サービス市場で大幅な需要不足が生じ、労働市場の需給が緩んでいるときには、財・サービス市場で需要の回復があっても、当初は、正規は増加せず、雇用量の調整が容易な非正規が増加し、ある程度労働市場の需給がタイトになってから、正規が増加に転じるというメカニズムがあると思われる。最近では、就業者で6,400万人、雇用者で5,600万人程度が転換の目安と思われる。
 正規、非正規の変動を、一般的な年金受給開始年齢の65歳未満、65歳以上に分けると大きな差がある。まず、65歳未満では正規は2012年に3,264万人であったのが、62万人減少し、2014年に3,202万人になった。それから増加が続き、2019年には3,380万人に達していた。2014年に比べると178万人の増加、2012年からでも116万人の増加であった。これに対して、非正規は減少や増加を繰り返しつつ傾向的には増加した。2012年と2019年を比較すると139万人の増加であった。うち「正規の職員・従業員の仕事がない」ため非正規となっていたのは2013年には329万人であったが、2019年には208万人まで減少した。非正規の増加のうち前半の2014年までの局面での増加が95万人、後半の増加が44万人であった。65歳未満では前半では正規は減少、非正規は増加と対照的だったが、後半は正規の増加が非正規の増加の4倍であった。
 65歳以上の動きは、比較的単純である。正規、非正規とも増加を続けている。正規は2012年の81万人から33万人、41%増加して、2019年には114万人になった。非正規は179万人から210万人、117%増加して、389万人になった。2012年には役員を除く雇用者のうち5%だったのが、2019年には9%に近づいている。なお、このうち「正規の職員・従業員の仕事がない」ため非正規となっていたのは2013年には12万人であったが、2019年には28万人まで増加した。65歳以上の非正規の大部分はこの理由以外である。2013年には192万人であったが、2019年には361万人まで、169万人、88%増加した。65歳以上の非正規の増加は、体力など様々な制約や余暇時間を選好する者が就労機会を見出した結果と考えられる。もし、そうなら、非正規労働者の増加を否定的に捉える必要は、あまりない。
 

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