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zoom RSS パートタイム労働者の賃金 その4

<<   作成日時 : 2006/02/04 09:16   >>

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パートタイム労働者の賃金」に、労務屋@保守親父さんから、コメントをいただきましたので、お返事を差し上げます。
二つの論点があります。

1 最低賃金による賃金平準化
 労務屋@保守親父さんのご主張の通り、最低賃金に賃金平準化の効果はあると思います。一定水準以下の賃金を違法とするのですから。

 ただ、私がやったように四分位分散係数で散らばりを捉えたときに、最低賃金が影響を与えるためには最低賃金(とその少し上の水準)が下位25%、757円程度、に入る必要があります。現在の最低賃金から見てそのような可能性は少ないでしょう。

 従って、最低賃金の影響だけではパートタイム労働者全体の賃金が平準化していることを説明することはできません。

2 大橋、中村両先生が考えていらっしゃる仕事の格付けと格付けに応じた賃金決定システムとはどんなものなのか。

 これは、先生方に聞かないと本当のところは分かりません。

 お二方とも新古典派的な発想をされる理論家なのだと思います。しかし、この本のこの部分に限っては、そのような説明をされていません。どうもこの部分は、浮いているような気がします。

 現在のパートタイム労働市場は、ごく普通のミクロ経済学で想定されているような市場です。つまり、多数の労働者と多数の企業があり、特に長期雇用というような契約上の制約がない市場です。

 普通ならそこで決まる賃金は、経済学的な観点からは妥当なものであると考えるべきなのですが、先生方は妥当なものとはお考えにならなかった。

 そこでそれを説明するために、市場が十分機能を発揮しない理由として、理論家らしくパートタイム労働市場には情報の非対称性があると主張されたと言うことでしょう。

 そして、その問題を解決し、市場の機能を十全に発揮させるために、まず、情報の非対称性を解消する仕組みが必要であるというご主張をされているのです。これは論理の流れとしてよく理解できます。それが具体的にはどのようなものを想定されているのかは分かりませんが。

 ただよく分からないのは、もう一つのご提案である「格付けに応じて賃金を決めるシステム」というものです。情報の非対象性さえ解消されれば、後は特別なシステムなしに外部市場で妥当な賃金が決まるはずです。労務屋@保守親父さんが「パートの賃上げは当然」で書かれているような市場の機能で十分なはずです。
 
 あるいは、社会的なシステムではなく、企業内の賃金システムをお考えなのかもしれません。

 私が、納得できないのは、先生方のパートタイム労働市場には情報の非対称性があるというご主張です。もちろん、現実にはどんな市場にも売り手と買い手の情報の非対称性はあるでしょうから、パートタイム労働市場にもある程度の非対象性はあると思います。問題はそれが、全般的な低賃金をもたらすほどのものかどうかです。

 両先生は、パートタイム労働者の離職率が高いことを、根拠にされています。確かに、毎月勤労統計の17年速報で集合形態別の離職率を見てもパートタイム労働者は一般労働者の2倍以上あります。(http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/17/17p/xls/17c06p.xls)しかし、『労働市場の経済学』148ページで「女子パートタイマーに関して必ずしも短期的・一時的な労働力としてだけではなく、5年以上の長期勤続者も数多く存在することがわかる。」と書かれているとおり、長期勤続者は数多くいます。これらのグループも賃金水準は高くありません。パートタイム労働市場での低賃金をこの市場における情報の非対称性で説明するのは無理があるといわざるを得ません。

 情報の非対称性がそれほどのものではないとすると、現在のパートタイム労働市場は、ごく普通のミクロ経済学で想定されているような市場であり、そこで決まっている賃金は、経済学的な観点からは妥当なものであると考えるべきでしょう。他に、理由があれば別ですが。

 別な観点から、賃金水準が低すぎる、フルタイム労働者との賃金格差が大きすぎる、パートタイム労働者の所得が低すぎるという主張は可能です。それを否定するつもりはありません。

 その場合には、政策は賃金統制などのパートタイム労働市場への直接的な介入、市場の機能を改善するような施策ではなく、社会的な施策か、あるいは所得再分配であるべきです。

 具体的には、保育サービスを拡充してフルタイム労働が可能になるようにし、パートタイム労働の供給を減らすといった施策があります。また、「児童手当 その3」で書いたように、児童手当を大幅に拡充するという手もあります。

 以下は、私の感想です。
 
 パートタイム労働問題が取り上げられるとき、パートタイム労働者へのある種の同情といったような者があって、現在の市場が十分機能を果たしているかどうか、十分検討しないまま、機能不全、賃金、賃金制度がおかしいということを自明の前提にして議論がされる傾向があるように思います。

 そのような議論から出てくる施策は、的はずれなものになるおそれがあります。


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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
パートタイム労働者の賃金について、その労働価値に見合うものになっていないとか、同一の労働を行う「正社員」と比べて賃金が低いという話になりがちなことの背景には、その賃金水準の妥当性以前に、賃金の決まり方が「正社員」とは異なる、ということが大きいように思います。パートタイム労働者の場合、一般的には、長期勤続が想定されていないため、賃金に占める勤続要素が小さくなるでしょう。この点が、同一企業で経験を積んだ一部のパートタイム労働者にとっては不満に繋がり、勤続の短い家計補助的な働き方をするパートタイム労働者にとっては高い満足度に繋がる、ということなのではないかと思います。
rascal
2006/02/09 00:12
パートタイム労働者の均衡処遇を社会問題と考えるならば、若年者の就業機会の問題を経路とした問題提起であるべきでしょう。若年者の就業機会が十分に確保されていなければ、将来的な社会の活力の低下や所得格差にも繋がります。例えば、本田他「「ニート」っていうな!」にある「図C」をあるべき将来的な社会ビジョンとして掲げ、そのための「インフラ」の一つとして、パートタイム労働者の均衡処遇が重要、といった問題の取り上げ方には、一理あると考えます。
ただし、そのためには、「正社員」の賃金の決まり方についても、勤続の要素を弱めるなど、パートタイム労働者の労働市場により親和的になるよう改めていくことが必要となり、その過程において、労働者1人あたりの生産性が低下してしまう可能性も、十分考えておく必要があると思います。
rascal
2006/02/09 00:13
rascalさん、コメントありがとうございます。
パートタイム労働者とフルタイム労働者の賃金の均衡は実に難しい問題です。また、このエントリーの続きで取り上げたいと思います。
平家
2006/02/09 20:56

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